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[はじめの一歩]価値のない鷹村守の勝利 リチャード・バイソン戦

鷹村守のWBC・WBA世界ミドル級王座統一戦がようやく終了。鷹村が豪快に相手をKOしてミドル級王座を統一するという快挙は本来なら長らく一歩を読んでいる読者としては喜ぶべきことなのかもしれない。しかし、この試合、ネットの評判があまりよろしくない。その理由をいくつか挙げていこうと思う。

1.鷹村守VS リチャードバイソン

この試合は読者の誰もが鷹村のKO勝ちを予想していた。結果としてそれは一切間違っていないのだが、鷹村は過去に戦ったブライアン・ホークやデビット・イーグル戦並み、もしくは、それ以上の苦戦を強いられることになる。

相手はアメリカのWBAのミドル級王者 リチャード・バイソン。戦績は未記述。過去にはアマチュアで2度ほどデビット・イーグルとの対戦歴があるが、いずれも負けている。プロでのリベンジを誓っていたが、鷹村がイーグルを倒してしまったことにより、鷹村を憎悪している。

初登場時、さほど強そうに描かれていなかったため、鷹村が少しだけ苦戦して、豪快にKOするんだろう。そんな風に思っていた。しかし、この王者、蓋を開けてみると鷹村をKO寸前のところまで追い詰めるのだ。

試合開始のゴングがなると、あまり強そうに見えなかった王者バイソンの描き方が一変する。デトロイトスタイルの構えを取りフリッカージャブを鷹村に対して浴びせるのだ。陰影が濃く描かれたバイソンの顔は試合前とは打って変わって強者の顔になっていた。

 

 

 

そんなバイソンに負けじと鷹村も陰影が濃くなり、こちらもいつものバカ村とは違う表情を見せる。

試合は予想に反して、ハイレベルな技術戦となる。1Rからフリッカーを自在に操るバイソンに対して、手を焼く鷹村だったが、なんとか致命的な被弾はせず応戦。2Rになると、今度は鷹村が試合では始めてフリッカーを使いだす。実戦で使用したことのないパンチだったが、フリッカー使いのバイソンを脅かす。

こうして、レベルの高い技術戦が続くが、鷹村の急ごしらえのフリッカーはバイソンに破られてしまい、バイソンの右ストレートのカウンターをもらってしまう。しかし、なんとかこらえダウンはせず。打つ手がなくなったか?と思われたが、今度は鷹村がバイソンに対して全く同じことをやり返す。首を捻ってダメージを殺すが、それでも、バイソンはダウンしてしまう。逆にフリッカーを封じられてしまったバイソンはインファイトで勝負するが、インファイトでも鷹村に打ち負けてしまう。精神的にも肉体的にもダメージをかかえるバイソンに対して、まだ余力がありそうな鷹村。これで試合はほぼ決したかに見えた。しかし、ここから読者は大きく裏切られることになる。

過去一番の大苦戦 鷹村守

ラウンド間のインターバルに突入すると鷹村の様子が変わる。サブセコンドの篠田さんに対し、足のマッサージを頼みお礼を言うのだ。今まで礼を言われたことがない篠田さんはあっけにとられる。試合が再開し、鷹村が仕留めにかかると思いきや、足が重い。手数が出ない。バイソンは苦し紛れに様々なパンチを出すが、鷹村にはすべて通用しない。もう、打てるパンチがなくなったバイソンはやぶれかぶれの状態で左のフルスイングのフックを放つ。誰もがカウンターチャンスと思ったが、鷹村は被弾。パンチを当てたバイソンも面を食らう。こうして鷹村のリズムはどんどん狂い始める。ストレート系のパンチには対応するが、左のロングフックだけがなぜか避けられない謎にセコンド含め、ジムの仲間である一歩達もあっけにとられる。左の強打をもらい続け、弱っていった鷹村に対して、ここぞとばかりにインファイトで鷹村を削っていく。甚大なダメージを背負ってしまった鷹村はバイソンの攻撃に対応できなくなるだけでなく、足の故障も見抜かれてしまい、防戦一方となるのだ。左のロングフックを再三もらい続けた鷹村はコーナーに追い詰められ滅多打ちにされる。鼓膜がやぶれ耳から出血し、意識も朦朧。セコンドからの指示や声援なども一切聞こえなくなった鷹村の姿はとても痛々しく、過去に対戦したブライアン・ホーク戦やデビット・イーグル戦に匹敵するレベルのダメージを抱えてしまう。ダウンはしていないもののダメージの深刻さから考えれば、鼓膜がやぶれるほどのダメージを抱えたことがないという点では過去最大の苦戦と言っていいかもしれない。

鷹村守は実質負けも同じ

コーナーから出られずボコボコにされる鷹村を見かねてチーフセコンドの鴨川会長がとうとうタオルはリングに向かって投げる。そう間違いなく投げた。しかし、、、

チーフセコンドが投げたタオルを空中でキャッチしたプロボクサーが二人。ジムの後輩である青木勝と木村タツヤの両名。ボクシングの歴史上、こんな方法でタオルを投入を阻止したことがあっただろうか?あったら教えてほしい。これは強調しておかなければならないのは、ボクシングの試合ではセコンドはチーフセコンド1名とサブセコンド2名の3名までである。試合を止めるタオルはチーフセコンドが持っており、そのタオルがリング内に投入されるとその時点で試合は終了となる。この2名はジム関係者ではあるが、セコンドではない。ただの部外者である。明確な規定があるかどうかは定かではないが、試合の妨害と見なされる可能性すらあるし、発覚すれば、この二人にはそれ相応の処分が下されることになる可能性すらある。タオルを奪われたことで会長の鴨川は二人を叱責するが、まだ試合中。鷹村は打たれ続けている。しかし、鷹村はそんなリング下のゴタゴタに目をやるとなぜか復活。故障していた足は使わずに、片足の回転運動のみで強烈なパンチをバイソンに打ち込む。逆にコーナーを背負うことになったバイソンを鷹村が豪快な右フックでバイソンを撃沈し、KO勝利。意味不明である。「3階級制覇!統一王者爆誕!」と書かれたところで、鴨川会長がタオルを投げたという事実は一切変わらない。というか、その事実はとてつもなく重いもののはずだ。何度も書くが、チーフセコンドが投げた瞬間その時点で負けなのだ。先っぽだけだから大丈夫とかそういう事ではないのだ。作者の森川ジョージも担当の編集もなぜこんな結末にしてしまったのか?青木と木村に助けられる鷹村など誰が見たいだろうか?この試合は鷹村の歴代の試合の中でも最低最悪な試合だったと言えるだろう。

試合のテーマだった人外とは?

この試合のテーマ「人外の領域」というものがある。世界王者の鷹村や世界を目指す間柴や千堂が踏み入れている領域のこと。主人公の一歩がその領域に踏み出すことができなかったため、ゴンザレスに敗北した経緯がある。一歩がその「人外の領域」を見極めるための3試合だった。しかし、蓋を開けてみればどうだろう?それぞれ最後はKO勝ちしたものの揃いも揃って大苦戦。作者の森川ジョージもそうだが、編集も含めて大苦戦=いい試合と思い込んでいる節がある。違うのだ。時には強者に快勝することもいい試合なのだ。ここ数年の一歩の試合は全て苦戦ばかり。強い敵に圧倒的な実力を見せつけてこそ人外なのだ。故障した状態でも強靭な精神力で勝つこと=人外なのではないはずだ。試合の見せ方があまりにも下手だ。無駄に試合も長い上に、ここまで苦戦が続くようであれば、さすがに一歩を読んでられなくなるレベルなので、作者も講談社も真剣に考えてほしい。