【はじめの一歩】幕之内一歩 ゴンザレスに伊達戦以来の失神KO負け 【2敗目】
2014年8月27日およそ1年間にわたり多くの多くの読者からあまりにも長過ぎると批判され続けていた幕之内一歩と世界ランク2位のアルフレド・ゴンザレスとの試合がようやく決着を迎えた。その衝撃の結末とは・・・
一歩VSゴンザレス戦の流れ
この試合、序盤から中盤にかけゴンザレスのワンサイドゲームで、一歩はポイントを全く奪えずにいました。それどころか、左のタイミングを学習させられ、相手にコントロールされたあげく、左のロングフックで真田戦以来のダウンを喫する事になる。その後も立ち上がるも、ゴンザレスにペースを握られたまま、ヒット・アンド・アウェイで有効打をもらい続け、技術的には一切通用せず一歩が肩を落としながら、自軍のコーナーに戻るも、チーフセコンドの鴨川会長も一切、的確な指示を与えることができずに後半戦を迎える。
引き出しが無くなった一歩は必殺技のデンプシーロールで勝負に出るが、あまりのレベルの低さにゴンザレスは一歩に対し「この程度で世界挑戦なんて、ふざけるな!」と怒りを覚え、ダメージを抱えている一歩に対し接近戦を挑む。そのファイトスタイルは、かつてスラム街時代のケンカ屋に戻る凶暴性を前面に押し出したスタイル「モードミキストリ=死神モード」。この「モードミキストリ」になったゴンザレスは一歩のデンプシーロールから繰り出されるパンチに対し強振のフルスイングで迎撃を図る。その結果、互いのパンチは肩をかすめるなどして、スリリングな打撃戦になり、デンプシーロールの回転もこの強振によって止められてしまう。互いにくっついた状態から一歩得意の超接近戦に持ち込もうと試みるが、相手は世界ランク2位、接近戦も巧みで一歩のパンチをほとんどもらわずに、一歩の頭部にダメージを蓄積させていく。ダメージを蓄積させていった一歩は再びダウン寸前まで打ち込まれ、その光景を観た観客や宮田や千堂たちも絶句するレベルに。レフェリーストップになってもおかしくないレベルのパンチをもらい続けても、まだ立ち続ける一歩に対し、ゴンザレスはイライラをつのらせ、一歩を倒そうとするあまりパンチが大振りに、その瞬間、一歩がパンチを掻い潜り、パンチを放つが、惜しくもガードされてしまう。しかし、ガード越しに脳を揺らし一歩がパンチを打ち続けると、ゴンザレスと相打ちに。結果、ゴンザレスだけがダウンし、試合を支配していたゴンザレスがピンチに陥ってしまう。
ここまででの内容でおよそ10ヶ月くらい。
一歩 VS ゴンザレス戦の結末は?
試合は両者激しい打ち合いになり勝負の行方がわからなくった。共にダメージを抱えたまま、試合は7Rに突入。接近戦を避け距離をとった方がいいというゴンザレスのサブセコンド達の意見に対し、チーフセコンドはあえて接近戦で勝負するように指示。ゴンザレスの目標でもあるリカルドの存在を思い出させ、ゴンザレスに目の輝きが戻る。リスクの高い接近戦でもゴンザレスは一歩にパンチを浴びせ、KOパンチになってもおかしくないほどの右ストレートを一歩に命中させるが、一歩はなんとか踏みとどまる。両目も塞がり意識朦朧になりながらも、鴨川の教えを信じ「自分たちのボクシングは世界に通用する」そう心の中で繰り返し、練習の成果を出しきろうとする。ゴンザレスのパンチを避け、左のボディブローで崩し、そこから滑らせるような左アッパーをゴンザレスの顎にクリーンヒットさせ、フラフラになりながらも一歩が仕留めにかかる。再び真っ暗になるゴンザレス。
勝利は目前。そんな時、鴨川会長の頭の中にウォーリーとミゲル・ゼールの二人の顔がよぎる。
「長所は短所-君たちはいずれ不幸になる」
ウォーリー戦後の後楽園ホールの廊下で強すぎる師弟の信頼関係は危険であると言われたミゲルの言葉を思い出す。
そんなとき、ピンチのゴンザレスの心に再び光が差し込む。
ゴンザレス「リカルドと戦うのはオレだ。」
一歩「会長と一緒に世界に行く」
そんな想いが交錯した両選手の右と右のパンチは強烈なカウンターとなり、ゴンザレスのパンチが一歩の顔面を直撃。一歩は前のめりにダウン。その瞬間、鴨川会長がたまらずリングインし、レフェリーがに試合止めた。
試合前・試合中から立っていた一歩の負けフラグ
今回の試合、一歩の負けフラグは様々なところに張り巡らされていた。
「試合前からの負けフラグ」
- 鷹村・間柴による「一歩は弱くなった」という発言
- 一歩が家を出る際、今まで試合を観たことなかった母親に対し、「今日勝ったら次は世界戦になるかもしれないから、その時は見に来て欲しい」と発言
- 試合会場の後楽園ホールのスタッフに「今日はいつも以上にオーラがない」と言われる
- 前座の試合から波乱続きで、一歩の後輩の板垣までもがまさかの1RKO負け
「試合中の負けフラグ」
- 一歩がダウンを奪い返し逆転のチャンスが訪れたにも関わらず、解説席の鷹村だけセリフがない。
- 接近戦でダウンを奪われたゴンザレスのセコンドが、距離をとらせず、あえて、リスクの高い打ち合いにいくように指示する。今までの流れであれば、こんな指示はさせない。
- 千堂がゴンザレスが一歩に勝ったらとびきりの褒美をくれてやる。と対戦を匂わす発言がされる
- 試合中盤からKOラウンドまでの複数回、鴨川会長の頭にウォーリーとミゲルの二人の顔がよぎる
など、一歩の負けを匂わす描写が複数存在。しかし、この漫画「はじめの一歩」は張っておいた伏線が回収されない事もあり、作者の森川ジョージがそれを忘れてしまい、なんだかんだで一歩が勝つ可能性も十分にありえたが、今回はそうした伏線はきちんと回収され、一歩のKO負けという決着を迎えた。
森川ジョージはなぜ一歩を負けさせた?
ゴンザレス戦前の一歩の戦績は24戦23勝23KO 1敗と数字だけ見れば、世界王者になってもおかしくないレベルの戦績。そんな一歩をなぜ、このタイミングで作者の森川ジョージが負けにしたのか?その理由がいくつか考えられます。
- 話を引き伸ばしつつ、物語の片付けに入っている
- 先のエントリーでも記載した通り、「はじめの一歩」の物語で片付けなければならない試合が多く存在します。一歩がランキング2位に勝ってしまうとラスボスとも言えるリカルドとの戦いが一気に近づいてしまう。作品の都合上、それは好ましくないと考えた森川ジョージが一歩に2度目の敗北を与えて、失神KO負けの主人公の一歩には暫く休んでもらいつつ、主要登場人物達の世界タイトルマッチや日本タイトルマッチを描いて、物語を収束させていく方向に持っていくのではないかと考えられる。また、一歩が入院した場合、長期離脱がほぼ確定的となるため、作者的には主人公の試合を描く必要がなくなり、サブキャラ達の試合を片付けやすくなるのが作者としては大きなメリットになるだろう。
- ゾンビスタイルからの脱却
- 残念な事に主人公でありながら、試合が致命的に面白くない。その理由は、左の名手には、とにかく打たれ続けボロボロにされ、ダウンこそしないものの、粘りに粘って破壊力抜群のパンチで相手の動きを止めて逆転KOというのが一歩のパターンである。しかし、宮田との試合が流れた後、一歩はアジア圏の国内王者と戦いレベルアップを図るが、いずれの試合もパンチをもらい辛勝する。タイのジミー・シスファーには突進スタイルのボクシングで苦しめられ、フィリピンのマルコム・ゲドーにはテーピングをゆるめた握りこんでいない左のジャブ一本で試合を支配され、インドネシアのウォーリーとの試合では驚異的な身体能力と反射神経の前にほとんど何もできず。それでも、持ち前の打たれ強さと根性で試合に勝利してきた一歩だったが、これらの不甲斐ない試合内容といくらもらっても倒れない理不尽なボクシング=ソンビスタイルに反発をする読者も多い。そのため、主人公であるにも関わらず板垣学と同様に嫌悪感を抱かれる始末。そんな状況を一気に解消するためにも、ゾンビスタイルでは世界には通用しないという事を1年をかけて描いたのではないだろうか?
- 鴨川会長のセコンドとしての苦悩を描きたかった
- 鷹村守という作中では唯一の日本人世界王者を誕生させた鴨川源二会長。名実ともに名伯楽などとは言われてはいるが、試合中は、セコンドとしての無能さを露呈させる事がかなり多い。ピンチの際に効果的な指示を出せないだけでなく、マルコム・ゲドーが使った伸びるパンチのカラクリを見抜けない事、リングを縦横無尽に動くウォーリーに対して対処方法などは一切助言できなかった。それを打開したのはいつも一歩の耐久力と精神力の強さだった。その打たれ強さに甘えてしまった鴨川会長は今回のゴンザレス戦でもセコンドとしての無能さを露呈する事になる。中間距離でパンチが一切当たらず、一歩がダウンを奪われてしまった際も、驚異的な回復力とスタミナがあるから自信を持てと、セコンドとしては言ってはいけない言葉をかけてしまう。その結果、中間距離で終始打たれ続け、ダメージを蓄積させることになった。その後も、ボロボロになるまで打たれ続け、なかなか倒れない一歩に対してゴンザレスが強振してしまったパンチの隙をついた一歩が、驚異的なパンチ力を武器に逆転の糸口を作るといういつもの流れに持っていった。ピンチの際は、一歩の打たれ強さに甘えきってしまい、助言はほとんどせず、選手自身に打開させる事に慣れてしまったのである。そんな時、ウォーリー戦後に言われたミゲル・ゼールの言葉よぎる。
- 長所は最大の短所ダ キミ達はいつか不幸にナル
- この長所とは、一歩の打たれ強さと精神力の強さではない。一歩が会長を信頼し、会長が一歩を信頼するという強い信頼関係である。その信頼関係が強すぎると、選手に必要以上に負担をかけてしまい、選手を苦しめてしまうというのがミゲルの助言の趣旨だった。鴨川会長は「そんなやわな鍛え方はしていない」とミゲルの言葉に反論するが、実のところ、ずっと引っかかっていて、今回の試合でその不幸が訪れてしまう事になった。
今後、予想される展開
一歩の長期戦線離脱が確定したため、物語は一歩以外の登場人物たちの試合が中心に描かれることになるだろう。
- ゴンザレス VS リカルド の可能性?
- 当初、ゴンザレスが一歩に勝った後、リカルドに挑戦し負けるという予想だったが、実現したとしても一歩に苦戦するレベルなので戦ったとしても試合としてあまり魅力的ではない上、作者的には、1年も試合をさせて、せっかくキャラ立ちしてきたゴンザレスをリカルドと戦わせてポイ捨させるのは流石にもったいない。となると、散々、リカルドに固執していたゴンザレスが今回の一歩との試合で己の実力不足を痛感し、確実に勝利するためにも今はリカルドとの対戦を避けて、WBCのベルトに照準を変更して、統一タイトルを狙うという流れになるのではないだろうか?WBCでもゴンザレスのランキングは上位なので、WBCのタイトルマッチはそれほど難しくないように思える。
- ゴンザレス VS 現WBC王者
- 作中ではWBCの王者は一切描かれていないため、はっきり存在するのか王座が空位であるかすらわからない。今回、ゴンザレスが試合に勝利した事でランキングは維持されるか繰り上がる。そうなると、WBCでも上位ランカーのゴンザレスが1位になる可能性もあり、実力不足からまだリカルドに勝てないと判断したゴンザレスが指名挑戦者としてWBCの王者と戦うか空位の場合は王座決定戦でタイトルを争うかの2択になる。いずれにしても、ゴンザレスがその相手には数ページ(または数コマ)で勝利するだろう。なぜなら、その方が主人公の一歩が負けた言い訳としても使いやすい上に、他のフェザー級の選手と絡ませることが可能となり物語の幅が広がるからだ。
- 新WBC王者ゴンザレス VS 千堂(または宮田) の可能性
- 一歩 VS ゴンザレス戦を後楽園ホールで立ち見で観戦していた二人のフェザー級の選手で両者ともに世界ランカーが千堂と宮田。一歩が負ける瞬間、黙って一歩が崩れ落ちるのを見る二人の真剣な顔は、この二人が一歩を破ったゴンザレスに興味を抱いた可能性が高い。とりわけ千堂が接近戦で一歩を圧倒しようとするゴンザレスに対し興味を抱いている描写がいくつもある上、千堂はメキシカンキラーを自称しており、対戦の可能性が宮田よりも高い。
- 青木 VS 日本ライト級王者 伊賀忍
- 青木としては因縁の相手なので、直接対決して敗戦した青木がリベンジマッチを行う可能性もある。しかし、実力差やファイトスタイルなどの相性などもあり、直接対決はしないかもしれない。
- 木村 VS 日本ライト級王者 伊賀忍
- 木村→青木→板垣→一歩と鴨川ジムの4連敗の最初は木村である。クズ化した等と言われるが、一歩の敗戦をきっかけにスイッチが入り、一度はジュニア・ライト級に留まる事を決意したが、青木と同じライト級に変更し、減量苦のないベスト階級で試合をすることを決意。青木が伊賀に負けた際の、鷹村と伊賀の専属トレーナーであるバロン栗田=通称マロンとのやりとりの中で、伊賀を負かす事ができる選手の名前を言えと鷹村が問われた際に「恥ずかしくて、今はとても言えん」とその時は名前を一切明かさなかったが、それがおそらく木村。おそらく、日本王者になっているであろう伊賀と木村の対決が実現するのでは?
- 板垣 VS 宮田
- 一歩の試合のセミファイナルで行われた板垣 VS 今井は板垣の1RKO負けで終わった。板垣が次に今井と戦った場合、板垣がスランプに陥っていない限り、かなりの確率で板垣が勝ってしまうように思える。そうなると、作者的にもこの二人を再び戦わせて、今井をフェードアウトさせるのは、少しもったいない。そうなると、冴木を倒して東洋ランキングを持っているはず板垣が宮田に挑戦するというシナリオも残されている。しかしながら、鴨川ジムと宮田親子は現在絶縁状態なので、鴨川ジムにいる板垣が宮田と対決するのは難しい。そうなると、交流のある間柴のいる東邦ボクシングジムに移籍し、宮田とスピード対決を行い、宮田が勝利。その後、宮田は東洋タイトルを返上し、世界を目指す。
- 鷹村 VS スーパーミドル級世界王者
- ミドル級から階級を上げて3階級制覇を目論んでいる鷹村守。作中でもリカルド同様に絶対的な存在。現実のボクシングでは、亀田の長男が3階級制覇をしてしまっているので、負ける事はまずあり得ない。王者はまだ登場していないが、それほど苦戦せずにすんなりと済ませてしまう可能性もあるのでは?
- 間柴 VS ライト級世界王者
- 作中では、世界戦を控えている人物として、間柴了の名前がしばしば挙げられている。いずれ動きがあるかもしれない。
- 可能性がほとんどない試合
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- ゴンザレス VS 一歩 (再戦)
- 1年も時間を費やした試合-作者の森川ジョージ的としては、両者を再び試合でぶつけるような事はないだろう。
- ヴォルグ VS 日本人選手
- 階級も団体も違うため、日本人選手と戦う事はありえない。一歩の世界ではIBFという団体は日本は認可されておらず、日本人選手は規定上、ヴォルグには挑戦できない。しかし、試合はしないものの、人気の高い選手なので、一歩復活のきっかけとしてヴォルグが再登場する可能性は高いと思われる。
- ウォーリー VS 日本人選手
- おそらく、ウォーリーも暫く登場しない。日本人選手がこの選手と絡んでも、良いことはないので、ウォーリーが世界王者になったとしても、IBFかWBOあたりで王者になっている感じだろう
1年にわたる激闘、一歩史上最長の試合
休載や減ページなど様々な批判が多かった一歩VSゴンザレス戦は1年という時間を経て、ようやく決着した。同日に行われたセミファイナルで行われた板垣・今井戦がわずか4話で終わったことを考えると、読者はかなりの時間、ゴンザレス戦を読んでいたことになる。これに対しては、多くの読者が長すぎると感じていたようで、批判もかなり多い。これからの試合は、読者的にはもう少しまとめてもらいたい。
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